COLUMN

サッカーワールドカップの真っ最中ですが、よく、中継を聞いていると「身体能力の高い選手ですね」というコメントを耳にしませんか?

身体能力が高い・低いとは、どうゆう事なのでしょうか?

外国人選手に比較して、日本人選手の身体能力は、どのくらいのレベルにあるのでしょうか?
身体能力を表す指標に、フィジカルアセスメントを測定する方法がありますが、本当に測定値が良いだけで、実際それが試合の最中に発揮出来るのでしょうか?
結論から先に言えばそれはNo,です。
測定上の能力と試合中の身体能力は、必ずしもイコールにはならないのです。
私が旧ユーゴスラヴィアスキーチームに在籍していた経験では、日本人選手より、測定上のデータが低くても、はるかに成績が上位にいる選手は多く見受けられました。では、どうしてこのような事が起こるのでしょうか?
ひとことで言ってしまえば、日本人選手より彼らの方が実際の運動中に、より一層の動きを発揮して競技をしているからなのです。
では、何故このような事が出来るでしょうか?
その違いを民族差による身体の使い方からお話したいと思います。

以前よりこのコラムで欧米人と日本人の身体の使い方の差異を述べていますが、一番大きく違うのが、股関節の使い方になります。使い方の差は脚の形状に表れます。
前かがみ(屈筋主導)で、股関節の可動域の狭い日本人は、大腿部前面(大腿四頭筋)から外側にかけて発達しており、一方股関節の可動域の広い欧米人は、大腿部後面(ハムストリング)内側にかけて発達をしている選手が多く見受けられます。
この形状は、動作を発揮している最中の安定性に非常に重要となってくる腸腰筋群、ハムストリング(大腿部後面)、脊柱起立筋群(背面)の活動指標となる訳です。
つまり、彼らは股関節を動作時に安定させ、身体を使い、最大限にその能力を発揮させる事が出来る訳で、その能力差は脚の形状にはっきりと表れるのです。

日本人の多くは、脚が太いから丈夫だとか、しっかりしている、太いからこそいいのだ、という観念を持っている様です。
このような意識の日本人は本当に多いのだなーと思うのが、日本人のサッカーの練習時に行われているブラジル体操を見ていれば、よくわかります。
この体操は本当によく考えられていて、すべての動作において先にも述べた腸腰筋群、ハムストリング、脊柱起立筋群といった、動作の安定性に必要な部位を覚醒させ、股関節の可動域を高め、より良い能力を発揮するプログラムになっているのですが、残念ながら、日本人はここに気づかず形としてのシルエットをとりあえず真似ているようにしか、私には思えないのです。
ひとつひとつの動作は、ゆっくりやると、本当に意味のあるものなのです。
元々、骨盤の中にある腸腰筋群が使える民族がプログラムをしたもの、と言えばそれまでですが・・・
このような差異を考えず、ただ練習だけしても、身体能力は発揮出来ません。

移動の歴史が少なかった日本人は、民族的にみても、まだまだ「動く」事に長けていない為、どう動けば良いのか?と常に考えている傾向になりますが、元々、移動の歴史がある欧米は、動くためにはまず安定して立てる事が必要で、安定性があってこそ、身体能力が発揮出来る事を遺伝子レベルで理解しているのだと思われます。
サッカーの試合を見ていて、外国人選手は、ゴール前の混戦から不安定な状態でも、軸足の股関節を安定させて、見事なシュートを入れる選手を見る事が出来ますが、一方、日本人選手は、軸足股関節の安定より、蹴る側の足を無理に使っている様子がよく見受けられます。
外国人選手に共通して言える事は、日本人選手と大腿部の形状が違う事、そして、不安定な状態でも、上体を安定させる事が出来、身体能力の高い股関節を持っている事実があります。
私はサッカーの専門家ではないので、技術的な事についてのコメントは控えますが、日本チームは「決定力不足」と、よく解説者が口にしていますが、選手一人一人の身体能力を最大限に発揮出来る股関節を有する事こそ、ここ一番の決定力不足の改善につながるのでは?と常々感じている事です。

本日と24日、と予選があります。
外国人選手との身体の差異に着目してゲームを観戦するのも、面白い観方ではないかと思います。
日本チームの貢献に期待を致します。

平山昌弘 拝

先日、ある友人から面白い話を聞きました。
ビブラム社(イタリア)の5本指がそれぞれ独立した構造を持つ靴があるそうです。それは、もともとウォーターシューズがメインで開発されたようなのですが、5本の指が独立している自由度の高さもあって、裸足感覚が受け、なんと皇居ランナー達に大受けだそうです。

友人からは、そのような靴でランニングをしても、身体には問題がないのか?

と質問を受けました。
早速、その靴がどのような物なのかをショップに足を運び試して来ました。まず、私の第一印象では、これはランニングには向いていない、と感じました。
確かに5本指の自由度は高いように感じるが、ウォーターシューズであるという感覚を強く感じていたら、ショップのカテゴリでも、ウォーターシューズに入り、店員も「ランニングには向いていないし、足の故障を招く原因にもなりかねないので、出来ればランニングには使わないで欲しい」という話をしていました。
では、何故ランニングシューズとして流行してしまったのでしょうか?
どうも友人の話によると、インターネット上で、5本指が独立しているので、裸足感覚で走り易いという書き込みから、始まったらしいのです。

今までの靴にない5本指が独立しているのは、足に自由度や裸足に近い感覚を与えている事は間違いはありません。
しかし、「走る」という観点で言うと、その感覚は間違った理解になってしまうのです。
そもそも、我々日本人は、「走る」という事に対しての感覚や意識が薄く、わらじ、草履、雪駄、下駄と言うように、どうみても走りには適していない履物を履いていました。
つまり、走る必要がなかったのです。
「江戸の大火」や「黒澤映画での百姓一揆」など、庶民が走る姿は、現代のランニングのスタイルようになっていないのは、一目瞭然です。
明治以前の日本人は、履物を少々小さいサイズで踵を出して履いていました。また、それが「粋」であるとされてもいたようです。

本来のランニングのメカニズム(歩行を基礎とする)を、足裏から解説をすると、踵ー小指球ー拇指球ー蹴る というプロセスになりますが、靴を履く前の日本人は、鼻緒をバランサーに使い、爪先から踵に向かって使うという、ランニングのプロセスとは反対の使い方だったのです。
そのような足の使い方であっても、早く走らなくてはならない飛脚は、ナンバの走りで足の動きをカバーしていたのです。

踵をホールド(包み込み)して、後ろから前に足裏を使う使い方は、今では当たり前になっていますが、戦後になって本格的に靴を履き出した日本人には、たかだか60年ちょっとの歴史しかありません。
10数年前からあるN社のシューズには、踵にかかる衝撃を軽減させる構造が見られます。この発想自体、欧米人の股関節を外旋し、踵から着地(接地)する使い方の重要性を理解した発想である事が伺えます。

昨今の日本は、ランニングブームですが、その裏ではランニングスタイルを追う余りに、身体にかかる無理や負担に気づけずに、身体を壊している人を沢山見受けられます。
このコラムの靴の件を見ても、足に対する日本人の感覚は、ランニングに対する意識レベルの低さを感じます。

このところ、欧米のベビーカーの人気が高いことを耳にしました。実際に街頭でベビーカーを使用している人を観察した後、ベビーカー売り場に出向き、機能性をAA(AWARENESS ANATOMY®)の観点から確かめてみました。

国産・輸入物のベビーカーの第一印象ですが、輸入物の方が使いやすい、と感じるのです。
では、それが何故使いやすいのか?を解説していきましょう。
以前にも述べましたが、引くノコギリを使う日本人、押すノコギリを使う欧米人との身体意識の差がベビーカーにも表れているのです。
つまり、身体の前側と腕の内側(力こぶの出来る側)を自分に集めるように(引く様に)使う日本人と、身体の背面から腕を押し出して使う欧米人との、身体に対する意識の差が、製品の差になっています。
日本製のベビーカーの多くは、水平の一本バーを両手で握るスタイルを取りますが、これは身体のメカニズムから言えば、押す事より、引く事に向いているスタイルになる訳で、このまま押し続ける事は、無用な拮抗が生まれ易く、特に背中の弱い日本人には、姿勢や歩行に悪影響が出て、疲れやすくなります。

一方、輸入物の多くは、グリップが左右独立しています。
そのグリップは、背中から押しやすく出来ており、歩行に適した構造となっています。また、脚とベビーカーの後輪の距離も十分に確保されているので、脚先が後輪にぶつかりにくくなっています。

製品は、制作者の感覚を表したものです。どうも、日本製のベビーカーは、機械的には優れているのですが、使用する側の人間の感覚差に対応する理解は乏しいと思われます。その証拠に、欧米から入ってきて、まだまだ日本人が使いきれていない商品が沢山存在しているのです。

日本製のベビーカーでも、欧米のスタイルを真似た、左右独立したグリップの形状の物もありましたが、実際に使用してみると、これが不思議な事に押し難いグリップになっており、結局は握りしめて身体の前側を使う事になってしまうのです。たかがグリップですが、シルエットが同じでも、実際に触ると押すと引くの違いが表れていたのです。

最後に、先日公園でアメリカ人の男性が日本製のベビーカーを使用しているのを目にする機会がありました。そのアメリカ人男性は、水平の一本バーを握るのではなく、指先を下に向けて、手のひらで押しているではありませんか!彼らには、押す意識が基本なのだな、と思わされる瞬間でした。

平山昌弘 拝

LPGA開幕から2連勝と好調な宮里藍をはじめ、上田桃子、横峯さくら、諸見里しのぶといったトップクラスの女子プロゴルファー達を見ていると、ひと世代前から、過去のトップクラスゴルファーとは違った、身体の使い方や意識の違いを感じます。
その一番の違いは、股関節・骨盤と思います。
ひと世代前のプロゴルファー達は、スウィング論という上半身中心の考え方の中で、腕や肩などを、どのように使って打つのか?つまり、上半身主体のゴルフでしたが、現在のトップクラスの選手を見ていると、過去の世代とは比べ物にならないくらい、下半身に対する意識の高さが伺い取れます。
そのベースとなるのが股関節・骨盤で、その安定性の上にスウィングを組み立てています。
彼女たちは、以前の女子プロゴルファーに多く見られた「手打ち」や「ミスショット」が少なく、パター時の股関節に対する意識の高さが、特に見受けられます。
その意識の高さが下半身の安定性を生み、結果的に脱力した、無理のないスウィングを生んでいるのでしょう。
無論、過去の女子プロゴルファーたちが、下半身の安定など考えていなかった、と言っているのではありません。
その時代には、そこまで身体の機能に対する知識のある指導者や、それに対する情報が少なく、先輩プロとの師弟関係などで指導を受け、プロゴルファーになった選手がほとんどですから、指導を受けた先輩の主観で、下半身の大切さは学んできたものの、それをスウィングが結びつくような論理的・専門的な指導は受けた経験がないのだと思います。
しかし、現在は身体に対する情報量が違います。
ゴルフの指導には、どうしても指導者の主観が入ります。
柔らかい・固い、曲がる・曲がらない、それぞれに使い方の癖もありますし、ましてや体型や体質の違いが大きく出ます。
スウィング論では、これらを考慮せずに方法論で教えていたので、それに疑問を持った私は、16年程前に旧ユーゴスラヴィア時代に学んだ股関節機能や、欧米人との民族差(※これについては、過去のブログ・REPORTをご覧下さい。)を、ゴルファー用に改良したトレーニング理論をゴルフダイジェスト誌に発表し、ゴルフ界で股関節ブームが起きました。
この時に私が述べていたのは、まず股関節でしっかりと立つ事。スウィングは二の次で、どう打つのか?ではなく、「どのくらいしっかりと立てるのか?」その為には、股関節は重要で、しっかり立てる量に応じたスウィングしか出来ない、つまり立てていないのに、無理なスウィングをすれば、結果ばらけてしまい、ゴルフにはならないという事なのです。
スポーツのパフォーマンスは、どうしても外のシルエットに行きがちですが、実はその裏にある安定や支えはプロであれば、さらに重要となってきます。
最近の彼女たちの活躍を見て、やっとプロゴルファーから、プロアスリートへ意識が変わって来た事を、16年経過してやっと感じるようになりました。

平山昌弘 拝

コラム−8「ビジネスの世界でもファンクション」

Studio Pivotで提唱しているAA(アウェアネス・アナトミー)は、身体本来の機能を理解・体感する事がもっとも大切であるということをコンセプトとしています。
先日、3/7(日)にTBSの情熱大陸を見ていたら、改善士:横田尚哉さんという方の仕事が紹介されていました。
10年間で2000億円のコスト削減を成功させた、改善のプロフェッショナルだそうで、その彼がバリュー・エンジニアリングと言う問題解決法を駆使し、このような業績を出した事から話題となり、地方自治体などからも引っ張りだこだそうです。
そもそも、バリュー・エンジニアリングと言うのは、固定概念や先入観にとらわれず、問題解決策を見い出そうとするもので、その方法として「ファンクショナル・アプローチ」(機能的研究)と言うものがあります。
つまり、目の前の問題解決に対して、「どのようにすれば良いのか?」(対処)と手段や方法から考えるのではなく、「何の為にあり、何の為にするのか?」(機能)という視点で徹底的に問題の本質を明らかにさせ、解決に導いていく方法だそうです。
身体業界(※注:これはStudio Pivotでの特化して言い方となります。リラクセーション・美容・フィットネス・鍼灸指圧マッサージ・接骨院など様々な身体にアプローチをする分野を総称してこう呼んでいます。)には、数多くのセミナーが存在していますが、そのほとんどが、「どのようにすれば」という対処に対する方法論中心のセミナーが多く、○○式、○○オリジナル、○○型といった方法論セミナーがほとんどと言っても過言ではありません。また、昨今ブームになっている解剖学も、本当に本質を理解しなければならない、人の機能(ファンクション)に対する意識がないまま、行われているのが現状です。
横田尚哉氏はホームページ上で、「ファンクションとは、機能と単純に訳されるものではなく、“役割”、”効用”、“目的”、“意図”、“働き”などの意味を含む」と述べておられます。
身体の機能は必ず“意図”と“役割”によって、“働き”があり、その”効用”を受け、“目的”を果たしています。
多くのトラブルは、これから逸脱することによって起こるのです。
しかし、この本来のファンクションを無視して、対処のみのバリエーションでアプローチを繰り返しても、抜本的な解決にはならない事は、想像がつくでしょう。しかしながら、この身体業界は、このような現状です。

私は講義中に、方法論だけを学ぶということは、はがれたペンキの上に、新しいペンキをそのまま塗り直すようなもの、と言っています。
つまり、本来のファンクションは、はがれた下地を磨き直し、新しいペンキがのり易くすることが大切になるわけです。

我々Studio Pivotでは、AA(アウェアネス・アナトミー)という、身体に対する視点と意識を変える「ファンクショナル・アプローチ」を中心に、身体業界は基より、様々な分野・業種へメッセージを送り続けています。

平山昌弘 拝

 

オリンピックは閉幕となりましたが、バンクーバーの最後のコラムは、女子フィギュアについて書かせて頂きます。
女子フィギュアはキム・ヨナ選手が金、浅田真央選手が銀という結果に終わりました。
浅田選手は金を目指していただけに、少々残念な気持ちもあるでしょう。しかし、、初出場で銀メダルならば上出来と思うのは、私だけではないと思うのですが・・・・

さて、今回は私なりに感じた二人の滑りの印象を、身体機能面から述べてみたいと思います。
浅田選手は昨年のグランプリ・シリーズでは、あまり良い成績が出せず、オリンピック前の韓国での大会に優勝はしたものの、やはり本来の調子は出し切れず、滑りに精細を欠き、オリンピックに入ってしまったような感じがします。
大会の数日前に浅田選手のドキュメンタリーがTVで放映されていました。
そこでは、数年前の滑りや今、行っているトレーニング、タラソワコーチの指導など、オリンピックに向かっている姿が映し出されました。
そこで、特に気になったのが、数年前の滑りです。
現在の滑りよりも着氷時に股関節に乗り、体重をうまく吸収していますが、今回のオリンピックの映像を見ていて特に感じるのは、着氷時に大腿部に無駄な力が入り、以前のような股関節で体重を吸収していたスムーズな滑りとは、異なって見えるのです。
あるスポーツ専門の整形外科医がフィギュア選手の怪我は「着氷と離氷の時に起こるのがほとんど」と言うコメントを聞いた事があります。
なるほど、とうなずける話で、滑りやすい状況下でのこの動作は、当然身体に負担がかかりますから、怪我の可能性が高くなる事はうなずけます。
以前、このコラムでスキー選手の股関節の話を述べましたが、スキーもスケートも競技は違えど、滑りやすい雪面や氷面では、股関節の可動域に対する要求度合いはかなり高度で、つまりこの部分に乗れて初めて上体が安定し、動作が成立すると言っても過言ではありません。

一方、キム・ヨナ選手は、着氷時に車のサスペンションのように、体重を吸収して、次の動作へとスムーズに移ります。また、大腿部の過剰な緊張もあまり見られず、彼女の動きに超一流選手に共通する、股関節に乗って安定させる、身体の使い方を感じました。
このような動きは、氷上以外でのトレーニングにも、バランス良く身体を使う事に重点を置いたトレーニングによる賜物だと思います。

TV放映されていた、浅田選手のドキュメンタリー内で、マシーンを使った筋トレの模様が流されていましたが、トレーニングの強度・頻度・時間などが詳しく分からないので、なんとも言えませんが、私の経験では、彼女のような体型の若い選手は、筋トレだけによくバランスではなく、関節機能から可動域、そして、身体への連動と股関節を中心に身体の深い部分から、不安定な氷面でも動作が出来、無意識に使えるようにする事が、筋トレ以前に不可欠となります。

彼女はまだまだこれからの選手ですから、ソチ・オリンピックに向かって頑張って欲しいものです。

平山昌弘 拝
 

2/23現在で、女子カーリング日本チームの成績は、スイスに破れ3勝4敗と少々苦戦しています。
数日前にこのコラムで書いたように、ショットの可能性(ショット率)は、何が大切なのだろうかを考えながら、ロシア戦を朝まで見てしまいました。
今まで、これほど注目してカーリングを見た事はありませんでしたが、ゆったりとしたショットフォームから、身体に対して正確性・安定性・再現性が高度に要求される競技だと言う事が、よくわかりました。
今回はゲーム・戦略は除いて述べさせて頂きます。

まず、目についたのがショットフォームの違いです。
ストーンを滑らす距離や方向、又、ストーンの回転などとの関係もあるのですが
日本チームは肘を一度曲げて押し出しながら腕を使っています。
一方、ロシア戦のみならず、今まで対戦をして来た欧米の選手はほとんど、肘を曲げて腕を使っている選手は見受けられないのです。
また、日本人選手の場合、腕全体の内旋(内側へのねじり)も見受けられます。
さて、このフォームの違いなのですが、実は民族差からくる、身体の使い方が表れているのです。
欧米人と比較して、腕の内側、胸、腹と言った前側にある屈筋群(自分の中心に集める動作をする)への意識が強いのが日本人の傾向です。
一方、欧米人はまったくその逆で、腕の外側,背中といった、背中側にある伸筋群(自分の中心から外へ出す動作をする)の意識が強いのです。
つまり、彼らは腕を背中で支え、肩で押し出す使い方をしますが、背中の意識が薄い日本人は、腕を内旋させて引き、それを先行動作にし、反動で腕を使います。
この使い方は、手先の細かい作業には適していますが、重いものを遠くへ正確に運ぶ事には、適していません。 

 

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日本人のフォーム                        欧米人のフォーム

© Studio Pivot



また、ショットの出だしのフォームを見て頂ければ分かるかと思いますが、あのフォームには、背中側の起立筋群と骨盤内にある腸腰筋群の拮抗関係があってはじめて、腕が無理なく支えられるので、ストーンを正確にショットへ導けるのだと思います。(ショット率があがる)このあたりを見ていると、やはり西洋から来たものだな、と感じます。

前側しか使えない日本人が駄目だと言っているのではありません。
拮抗関係を改善して、まず、背中側の支えを十分に安定させることが出来れば、ビックショットの可能性も高くなります。
我々日本人は、意識・感覚といった部分の改善で色々なものをクリエイトをしてきました。
カーリングはその改善によってまだまだ欧米に対抗出来る可能性を秘めている競技であると思います。
残りの試合がベストを尽くせますように、彼女達のがんばりを応援しています。

平山昌弘 拝

日本フィギュア界男子で初となる、高橋選手が銅メダルを獲得しました。
彼には、メダルの期待がかなりかけられていたようで、本人もさぞプレッシャーになっていた事だろうと思います。
オリンピック開会前に怪我をした彼のリハビリを追ったドキュメント映像が放映され、そのインタビューの中で、怪我によって自分の身体の固さに気付き、それが今回の怪我の一因であったことや、柔軟性の改善がなければ、また負担をかけてしまい、怪我再発の危険性が高いことを、本人が「認識」したコメントがありました。
その中で、特に股関節の重要性に大きく触れています。
怪我をする前と、手術・リハビリ後の、ジャンプ着氷時(特にトリプルアクセル)の比較映像が流れていました。
明らかに、手術・リハビリ後では、股関節の可動域に変化がみられ、ジャンプをよりやわらかく安定したダイナミックなものになっています。
このドキュメントの中では、リハビリに励む彼の姿も映し出されているのですが、それを見ていて旧ユーゴスラヴィア・スキーチーム時代のある選手を思い出しました。
彼の名はトーマス・チーズマン・世界ランキングで80位ー100位を行ったり来たりの選手で、身体も大きくチームからも期待されている選手でした。しかし、残念な事に彼は腰に持病があり、疲労が蓄積すると、いつも腰を痛めるというパターンを繰り返していました。そんな彼が変わりだしたのは、腰痛の原因が股関節の固さからくる、使い方にあるということを認識してからです。股関節の使い方の結果、腰に無理な力がかかり、痛みが出ているのであって、腰が悪いのではなく、股関節に問題がある事を私が指摘し、それを受け入れ認識をしてくれたのです。
その後、彼はコロラドベイルでの世界選手権で3位まで登り詰め、若くして引退し、今は母国で実業家として成功しています。
私の経験から、彼らのような怪我の後に復帰し、成長する選手に共通して言えるのは、「自分の身体の問題点に対する認識の高さ」があることです。
どんなリハビリを行うにしても、ただ行うのではなく、何故自分はこうなったのか?を理解し、問題点を徹底的に洗い出して認識し、それと向かい合う姿勢が重要だと言えます。
一方、残念ながら、一流選手の中には、ジュニア時代から好成績を残して来ている選手には、自分のスタイルややり方を変える事が出来ず、とりあえず聞いてはいるものの、指摘されたその問題点と向かい合わず、認識不足のままトレーニングだけを積んで、つぶれて行く選手も多く見受けられます。
怪我からの復帰での銅メダルは、彼の努力もさることながら、自身に対する高い認識力や行動力、それに、彼の性格にも影響した大きな価値のあったメダルだと思います。

 

平山昌弘 拝
 

はじめて、カーリングを見たのは1988年・カルガリーオリンピックでの公開競技でした。
その時の第一印象は、「本当に面白い競技だなー」と思った事を覚えています。
1998年の長野オリンピックで正式競技になった(IOC公式記録は2006年より)わけですが、カルガリーオリンピック以降10年はメディアに紹介される事も多くなり、テレビでも競技が放映されるようになってから、ついつい、持ち前の分析癖がはじまり、「もしかして、この競技は日本人に向いているかも?」と思った次第です。
その理由として


○大きな力は必要がない。 
○正確性と技術が要求される。
○ゲームを組み立てる頭脳が要求される。

など、まさしく日本人向きです。
自分のパワーやスピードより、正確に目標に向かうために、身体をいかに安定させて使うか?が、かなりのウェイトを占めているのではないでしょうか?
このコラムで述べてきている、股関節の可動域・乗る・安定性といった、全ての要素が要求されているのだと思います。
例えば、正確にショットをする為にいかに身体を使うのか?このような自分の身体に対する正確さの再現性が、ショットやフォームに現れているのではないでしょうか?TVを見ていて感じています。
中国戦を終了し、1勝2敗。少々苦戦をしていますが、今後の競技を見ながら、身体の関係性と、ショットとフォームの安定性を述べていきたいと思います。

平山昌弘 拝

残念ながらスキー•モーグルの上村愛子は4位という、メダルに今一歩届かない成績に終わりました。
日本中がメダルを期待していただけに、本人にとっても悔いの残る結果だったのかもしれません。
試合後のインタビューで「何で、一段一段なんだろう」という彼女の言葉が印象に残りました。

何故、一段一段なのでしょうか?

モーグルの採点はターンが50%、エア25%、スピード25%の割合となっていて、そのうちターンは競技全体の50%を占めています。そしてそのターンには、以下4つの要素を評価することになっているそうです。
1.フォールライン(スタートからゴールの最短距離を外さずに滑っているか?)
2.可能な限り接雪し、エッジを使ったカービンターンになっているか?
3.コブからの衝撃を上手に吸収しているか?
4.上半身は安定しているか?

決勝レースを見ていて感じた事は、金メダルのハナ•カーニー(アメリカ)、銀メダルのジェニファー•ハイル(カナダ)、特にこの2選手の上半身の安定性には、目を見張るものがあります。
彼女たちは、滑走中にコブからの衝撃を上手に吸収して、常に上半身(特に背中)を安定させて、フォールラインに向かって雪面をとらえ、カービンターンをしているのです。

イラストは、メダリストたちのフォーム(左)と、上村のフォーム(右)です。

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©Studio Pivot

 



上村は、確かに前回のオリンピックに比べると断然上半身の安定性は向上しましたが、残念ながらメダリストたちに比べると、上半身のブレは数少ないとは言えませんでした。特に、コブの衝撃時には、その差が見受けられました。

では、このフォームの違いとは何なのでしょうか?
それこそが、前回•前々回と述べている、股関節に「乗れる」「乗れない」の差となって表れるのです。
日本人と欧米人を比べると、股関節の身体意識というのは、最も差が表れる身体部位となります。
旧ユーゴスラヴィア時代に、数多くの欧米選手の股関節への意識の差を目の当たりにして培った経験的推測でもあります。

特に股関節の可動域においては、明らかに違いが表れ、またその結果は、姿勢(特に背中のシルエット)の違いを見る事が出来ます。
つまり、乗れていないと背中が丸まりやすくなり、上半身全面(屈筋)主導のシルエットになります。
一方、股関節に乗れている場合は、上半身後面(伸筋)主導で上体を支える事が出来ます。
その結果、雪面でもウエイトシフトが可能となり衝撃吸収もスムーズになります。

これらが、ターンの採点基準にある4つの要素に反映されているのでは?…と私は思います。

メダリストたちは、民族的特性により、日本人より優位であった事が推測出来ます。
上村が残した「一段一段」とは、股関節の「乗れる」「乗れない」、この差が出たのではないかと思います。

 

平山昌弘 拝