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関節力コラム

スキートレーニングと関節力

※このコラムはバンクーバーオリンピック開催中に書いたものが基になっています。

皆さん、こんにちは。
ちょうどバンクーバーオリンピックも始まりましたので、

最初は旧ユーゴスラヴィア・ナショナルスキーチーム在籍時代の話を

していきたいと思います。

在籍時はカルガリーオリンピックが開催され、選手に帯同した履歴があります。

追々、当時の話をして参ります。

今回は、当時の同僚の話を書かせて頂きます。

旧ユーゴスラヴィア・ナショナルスキーチームに在籍していた頃の同僚に、

マルコ・クレメンチッチと言う、トレーニングコーチがいました。

彼は幼い頃から日本人師範に空手を学んでいました。

五輪書を読み、武道やサムライ精神にも精通した、宮本武蔵が大好きな人物でした。

その彼が常々言っていた事は

「日本人はどうして筋力やパワーという近代的なトレーニングに

意識を大きく向けるのだろうか?

何故、もっと自分たちの歴史的な身体の使い方を活用しないのだろうか?」

というものでした。

ここで言う歴史的な身体の使い方とは、力ではなく、技の事で、

ただ大きな力をつければ良いというものではなく、

身体の使い方で無理なく大きな力を発揮する、

まさしく日本の武道の稽古に見られる、身体の使い方なのです。

日本人は欧米人に比べ、身体が小さかった分、効率良く身体を使いこなし、

最小で最大の力を発揮する使い方が有り、この集大成が武道の稽古だった、

と彼は言っていました。

実際、旧ユーゴスラヴィア・チームのフィジカルトレーニングには、

空手の型があったり、日本の武道を応用したものが、トレーニングメニューに

多く組み込まれていました。

当時の旧ユーゴスラヴィアは、アルペンスキーの世界では、トップクラスの実力でした。

そんなトップクラスのチームの中で、日本の武道を応用したトレーニングが

行われていたのです。

具体的にどのような方法だったのか?ですよね。

一言で言えば、パワーより安定です。

筋力をつけ、パワーを上げるという考え方ではなく、まず、関節機能を最大限に使い、

力に頼らず骨(関節)で出来る限り支えられるようにする事なのです。

一例を挙げると、スクワットの動作一つにしても、

どれだけ重いバーベルを持ち上げられるか?

よりも、四股踏み(しこふみ)や股割りと言う、武道的な動きを通じて、

身体のどこの関節をどう使ったら(この場合は股関節)楽に上がるのかを探すのです。

最大値のMAXを上げる事ではなく、

まず、骨格・関節を中心として機能効率を上げる事により、

動的な安定性を高める事がメインとなる訳です。

筋力=運動能力

このように思い込んでしまっている日本人ですが、これはスポーツだけに

言える事ではありません。

最近では、老人介護のリハビリなどでも良く耳にする話です。


数値が向上すれば良い訳ではなく、まず、自分自身の身体を使いこなす事が重要です。


その為に必要な「安定性」を骨格や関節機能から会得し、

それをパフォーマンスへと結びつけて行く。


どうも、このプロセスが現代の日本人には不足しているように思えます。

何故、昨今、武道がトレーニングブームになっているのか?

24年前、すでに彼にそれを指摘されていたと言う事は、なんと皮肉な事でしょう。

動きは安定性によって生まれる。

ついついどう動くのか?どう動いているのか?

を見てしまいますが、動いている時の安定性はどうなのか?


この視点で開催中のバンクーバー・オリンピックを見て頂くのも

おもしろいと思います。

冬のスポーツこそ、安定性が鍵となります。陸上競技に比べ、

雪や氷といった滑りやすい状況下での競技です。

安定性がなければ、動く事は出来ません。

これこそ関節力なのです。